老人喰い - 鈴木大介
特殊詐欺の主犯たちを描いた(ほぼほぼ)ノンフィクション。
特殊詐欺を生業にしている人たちは、概して低階層出身で、金持ってる年寄りにある種正義のカウンターを仕掛けていると。それゆえ罪悪感もあまり持っていないことが多い。
一部の特殊詐欺グループは組織として非常に洗練されていて、メンバーも体育会的に鍛えれて頭もキレる奴らが多い。
頭がキレる奴らも多いのにアウトロー的な位置に組み込まれてしまっているのは社会的損失である。
ざっとこんなようなことが書いてあった。
確かに特殊詐欺で荒稼ぎしているような人たちは、相手を言いくるめる(時に脅す)といった意味での「コミュニケーション力」は高度で、組織順応性も高い場合が多くあるんだろう。
ただ一方で、社会的な折衝であったり、妥協・融和・協調的な「コミュニケーション」で一般社会での適性があるかという面ではわかんないかもしれない。
Fラン→ブラック営業→特殊詐欺グループ的なキャリアの流れも勿論問題なんだけど、中学(高校)卒業(中退)後、地元に仕事がなくて都市部で特殊詐欺的なことやるしかキャリアがねぇっていう問題がより深刻かなと。
この辺は景気もそうだけど、「貧困の連鎖」や「こどもの貧困」の問題が強く絡んでくるのでしょうね。
そしてこの本で出てくるような特殊詐欺で荒稼ぎする人たちは、ある種のエリートであって、そんなことすらできずに底辺で蠢く人たちが無限にいるんだろうと思うとなかなかやりきれない気持ちになるなど。
特殊詐欺の実態を眺めるのも面白いんですけど、他にもいろいろ考えることの多い本でありました。